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信頼・自制・感謝

 アトムの前足の小指と薬指の間には腫物ができます。夏が近くなると大きくなり、膿んで時々つぶれて血や膿が出ることがあります。
 獣医に連れて行って薬をもらいますが、足だけになかなか直りません。獣医曰く腫物の中に小さな物が入っていてそれで腫れるんだろうとのことです。切開して取り出してしまえば完治するかもしれないのですが、それほど大きくならないのでその必要はないでしょうと言われています。

 夕方の散歩から帰り、まったりとしていたらアトムの腫物から血が出ているのを見つけました。アトムも気になるらしくペロペロ舐めていました。
 血が出ていた右前足を掴み、ティッシュを当ててまず少し押して膿を出してみました。痛い所を押されているのできっと嫌がっているだろうと思ってアトムの顔を見たら、ジーッと私の手元ではなく私の目を見ていました。
 その目の光には「お父さんを信じている」という信頼が見えました。

 「もうすぐ終わるからね、我慢するんだよ」
と励ましてギュッと腫物を押したらちょっと痛かったんでしょうね、後ろ足で私がアトムの右前足を掴んでいた手を払いのけようとしました。
 しかし後ろ足が私の手にぶつかる前にその動作は止まりました。「そんなことしちゃいけない」とアトムが自制したんだと分かりました。

 薬をつけている間もおとなしく、じっと私を見ていました。薬を塗り終わって
 「アトム、よくがんばったね、もう終わったよ」
 と言ったらアトムが私の口をペロッと舐めたんです。薬を塗った右前足や、掴んでいる私の手ではなく、私の口を舐めたんです。

 絶対「ありがとう」って言ったんです。絶対そうです。


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